定年制度について解説!企業は何歳まで雇用を続ければよいのか?

滋賀県近江八幡市JR安土駅前で社会保険労務士をしている小辰です。

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突然ですが、皆さんの会社の定年年齢は何歳となっているでしょうか?

また定年退職後に再雇用の制度はありますか?

意外と定年と定年後の再雇用の違いを理解されている方は少ないように感じます。

今回はこの辺りを解説していこうと思います。

高年齢者雇用安定法とは?

まずはじめに高年齢者等の雇用の安定等に関する法律として高年齢者雇用安定法という法律があります(以下、高年法)

高年法に高年齢者の雇用に関する法律が定められているということになります。

高年法は元々は45歳以上の中高年齢者を対象に「高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法」として昭和46年に制定されました。

日本の少子化が急速に加速していく中で、法改正が重ねられ2004年に事業主に対して①定年年齢の引き上げ②継続雇用制度の導入③定年制の廃止のいずれかの実施を法的義務としました。

さらに2012年の改正により、定年後の希望者全員が継続雇用制度の対象者になるように企業に義務付けしました。

企業には65歳までの雇用の確保が求められている

企業は高年齢者の雇用に関して、65歳まで雇用する機会を確保する義務があります。

社員の定年年齢を定める場合は定年年齢を60歳以上とする必要があります。

またそれに加えて高年齢者雇用確保措置として以下のいずれかの措置を実施する必要があります。

  • 65歳までの定年の引き上げ
  • 65歳までの継続雇用制度の導入
  • 定年の廃止

これらに関しては当面60歳に達する社員がいない場合でもいずれかの措置を実施しなければなりません。

高年齢者雇用確保措置のうち、どれを導入するべきか?

先ほど高年齢者雇用確保措置として3つの措置について紹介しました。

では自社の場合、どの措置を導入すべきかという事が重要になってきます。

以下にそれぞれのメリット・デメリットをまとめました。

メリットデメリット
定年の引き上げ・優秀なシニア社員を確保できる
・雇用管理が継続されるため管理がしやすい
・人件費がかさむ ・組織の活性化が図れない
継続雇用制度・人件費を抑えることが可能 ・組織の活性化を図ることが可能 ・給与低減や身分変更に伴い従業員のモチベーションが下がる
・雇用管理が断絶され、身分変更の場合は雇用管理が  煩雑になる
定年の廃止・優秀なシニア社員を確保できる ・雇用管理が継続されるため管理がしやすい ・人件費がかさむ ・組織の活性化が図れない
・社員の退職の申出があった場合や解雇などにならない限り雇用が継続される

この中でも一番導入されているのは継続雇用制度です。

継続雇用制度というのは例えば60歳で定年退職とし、その後65歳まで再雇用して65歳までの雇用を確保する方法をいいます。

60歳で定年後に再度契約を結ぶため、定年時と違った労働条件で働いてもらう事が可能になります。

多くの場合では仕事内容や労働時間の変更に伴い、賃金が減額されたりするケースが多いです。

仮に定年を引き上げて65歳とした場合は、60歳になっても労働条件を引き下げたりすることは基本的にできず、65歳の定年までずっと労働条件をキープしなければなりません。

以前に65歳定年の企業の就業規則に60歳以降は賃金を20%減額すると書かれた就業規則をみたことがありますが、こういったことは出来ません。

定年を廃止した場合は、労働者本人が辞めるというまではずっと雇用を続けなければならないですし、もちろん年齢を理由とした労働条件の引き下げも出来ません。

定年の引き上げや廃止はメリットももちろんありますが、反面こういったデメリットも多いです。

ちなみに高年齢者雇用確保措置の実施状況は全国の常時31人以上を雇用する企業のうち99.8%が実施しており、導入の内訳としては、定年の引き上げが18.1%、継続雇用制度の導入が79.3%、定年の廃止が2.6%となっています。(平成30年調べ)

これらからわかるように継続雇用制度がダントツで多いことがわかって頂けるかと思います。

いずれの措置を取るかは自由ですので、会社の考えや状況等を踏まえ検討して欲しいです。

70歳までの雇用確保の努力義務とは?

先ほどまで65歳までの雇用の確保に関して解説してきました。

しかし、日本の少子高齢化の影響により今後は高年齢者が働き手になってもらう必要性は、ますます高まっています。

そういった中、2021年4月より65歳までの雇用確保義務に加えて70歳までの就業確保措置をとることが努力義務とされました。

内容としては以下となります。

2021年4月から追加された努力義務

①70歳までの定年の引き上げ

②定年制の廃止

③70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入

④70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入

⑤70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入

 →事業主が自ら実施する社会貢献事業

 →事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業

ただし、これらはあくまで努力義務ですので65歳までの雇用確保措置をとっている会社なら、2021年4月以降においてもこれらの措置をとる必要はありません。

ただし、今後は”努力義務”から”法的義務”に変わっていく事が予想されます。

ちなみに努力義務というのはその名の通り努力なので、必ず実施する必要はないけど出来れば実施してください。そんなイメージです。

定年制度に関する助成金

最後に定年制度に関する助成金として65歳超雇用推進助成金をご紹介します。

60歳以上の雇用保険の被保険者が1名以上在籍している企業において①65歳以上への定年の引き上げ②定年制の廃止③希望者全員を対象とする66歳以上の継続雇用制度の導入などを実施した企業に助成金が支給されます。

これらを検討されている企業には助成金の受給も併せて制度の導入を検討するのもよいですね。

https://www.mhlw.go.jp/content/001075313.pdf

こちらにリンクを張っておくので参考にして下さい。

おわりに

今回は定年制度について解説しました。

定年と継続雇用の違いや、それぞれのメリット・デメリットを理解して頂けたかと思います。

今回の記事を読んで「会社の定年を引き上げようか?」「継続雇用する際の手続きはあるのか?」など疑問に思われた方も多いのではないでしょうか?

また「助成金も受給できるなら申請したい」とう様に思われている方も多いかと思います。

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最後までお読みいただきありがとうございました!